
チェコには2017年7月時点で、計12点の世界遺産が存在します。
プラハ旧市街はじめその多くが、複数の建物を含む一定のエリア「歴史地区」で、他に教会や庭園、城などがあります。
私も全部は観れていませんが、そのうちもっとも「こぶり」サイズの世界遺産があるのが、モラヴィア地方の都市「オロモウツ」です。
オロモウツは上モラヴィア低地のハナー地方の中心都市でもあり、またモラヴィアのローマ・カトリック教会の中心地でもある。ロマネスク様式、ゴシック様式の教会や市役所が建ち、記念物保護指定都市に定められている。オロモウツは首都プラハに次いで文化財を保有する都市であり、街の中心部にあるオロモウツの聖三位一体柱は、ユネスコの世界遺産に登録されている。
チェコでは第五の都市で、人口は10万人ほど。
決して大きくはないのですが、プラハについで文化財を保有する都市というからびっくり。
明るく、洗練された印象の街並みを歩きながら案内してくれたガイドさんがこの方。
シュテファンさん。
今回のチェコのプレスツアーでは、各都市ごとに違うガイドさんがついて案内をしてくれましたが、この人が一番見事でした。
明るく力強く、そして溢れるオロモウツ愛。
「サンミーイッタァイノハシィラ」など、日本語の単語もいくつも覚えていて、それをパワフルトークの中に奇妙なイントネーションでちょいちょい混ぜてくるものだから、そのたび一同爆笑。そして新しい日本語の単語を教えると、即座にノートに書きとって、次からはそれも混ぜてきました。
そんな記憶力にも脱帽です。
街の中心広場にはオロモウツの街模型。
これを使ってまずは概要と、どんなルートで街歩きするかを説明してくれるシュテファンさん。
オロモウツは、中欧の主要都市から200キロくらい離れており、古くから軍事拠点が置かれた要塞都市だそうです。
そして今は、「大学の街」でもあります。
リトミシュル食の祭典で出会った日本人留学生の大半、そして日本語勉強中のチェコ人大学生は、オロモウツにあるパラツキー大学で学ぶ学生さんたちでした。モラヴィア地方ではもっとも古い大学で、チェコ国内でもプラハのカレル大学に次ぐ歴史をもった大学です。
人口10万人のオロモウツの中で、約25,000人が大学生というから、どれだけ現在のオロモウツが「大学城下町」なのかお分かりいただけるでしょう。メインストリートには本屋さんがたくさんあり、普段は大学生で賑わうというピザ屋やカフェなども。
そんな学生街の賑わいを感じたかったのですが・・・
残念ながらこの日は週末。
ほとんどの店は閉まり、通りも閑散としていました。
人口の1/4の学生さんたちは、週末いったいどこで何をして過ごしているのでしょう、それが大きな疑問です。
プラハの旧市街広場にも、凝った巨大天文時計が設置され、世界各国からやってきた観光客のカメラで撮影しまくられていましたが、オロモウツの天文時計も非常に興味深い物です。チェコの中でも、プラハの天文時計とオロモウツの天文時計の2大時計で「オルロイ」と呼ばれているそうです。
場所は町の中心の広場に建つ市庁舎の壁。
この時期、壁面や瓦屋根などの大規模な修復工事が行われており、建物周囲には足場が組まれていましたが、天文時計は見ることができるようになっていました。
その最大の特徴は社会主義時代にリニューアルされて描かれた人物像や、仕掛け時計で出てくる人物のミニチュアです。
側面には、緑色の円の中に人物が描かれていますが、お気付きでしょうか。
みな、真面目にお仕事をしている肉体労働者なのです。
この建物や天文時計は500年の歴史をもったものですが、社会主義の時代に、「社会の主人公は労働者である」ということで、貴族や聖職者といった人物ではなく、働く善男善女に描き替えられたのだとか。
その後、正時にからくり時計が動くのもみたのですが、出てくる人物たちは確かにみな、様々な職業についていると思われる人たち。
下部には、スパナを持った人の他に、フラスコと試験管を握りしめた白衣の研究者と思われる人物も。
その向かいにある、かなり黒ずんだ塔。
これが世界遺産に登録されたオロモウツのシンボル「三位一体の柱」です。
●Czech Republic – オロモウツの聖三位一体柱
スケールと豪華さと美しさにおいて他に類を見ない記念碑を建てる。これが往時オロモウツに住んでいた人々の願いであり、この地に聖三位一体柱が建造される機縁になりました。独立した作品としては中央ヨーロッパ最大のバロック彫刻であるオロモウツの聖三位一体柱は、その歴史的・芸術的価値が評価されユネスコの世界遺産に登録されています。
細部に至るまでぎっしりと彫刻がほどこされた柱。
オロモウツはもともと司教座がおかれていた都市で、長らくモラヴィア地方の中心都市の地位にありました。
17世紀に首都はブルノに移され、この三位一体の柱が作られたのはその後の1754年。フランス革命で処刑されるマリー・アントワネットが生まれる一年前です。献堂式にはマリア・テレジアとその夫の神聖ローマ皇帝フランツ1世が臨席しました。
このオロモウツには、たくさんの噴水が作られており、それも市民の誇りとなっています。
ヨーロッパ主要都市の中でも、ここまで噴水が多くつくられているところは少なく、三位一体の柱同様、街の威信をかけて作ったというような話をシュテファンさんがしてくれました。ドイツの影響が強いこの地域ですが、噴水が多くある街並みはイタリア的な雰囲気だとも。
夜になる前にオロモウツを離れてしまったので見れませんでしたが、ライトアップされた噴水や建物も美しいですね。
イルカの口から吐き出された水を飲む鳩。
大量に積み上げられていた茶色いもの、プラハの古い町並みも上から見下ろすとこの色に染まっています。そう屋根瓦です。
びっくりするような傾斜の屋根の骨組みは木材でした。
屋根にかけられたはしごを、塊になった瓦がするすると引き上げられていくのはなかなか面白い物。
おそらくこの修復で、屋根瓦をすべて新しくしているのでしょうね。
500年も前の歴史ある建物を、こうして地道な修復作業で維持してゆくことは、きっととても大変なことであり、大事なことなのでしょう。