[インタビュー企画第七弾] 日本テレコム「BBモバイルポイント」中村氏&茨木氏

マクドナルド全国約2,600店舗に順次導入─日本テレコム「BBモバイルポイント」

写真:日本テレコム中村氏(右)&茨木氏(左)記事作成:2005/12/09

日本テレコム
無線LAN事業戦略室
≪写真右≫室長 中村 圭祐氏
≪写真左≫モバイルポイント推進グループ マネージャー 茨木 敏氏

ソフトバンクBBの「Yahoo!BBモバイル」と日本テレコムの「モバイルポイント」が統合し、新サービス「BBモバイルポイント」が誕生したのが10月3日。

そしてその翌月にはマクドナルド全国約2,600店舗への導入が発表された。
BBモバイルポイント、マクドナルドの全国約2,600店舗にサービスを導入(INTERNET Watch 2005/11/09)

新サービス開始後の状況、マクドナルド導入一挙拡大のインパクト、そして2006年以降の注目トピックスについて、日本テレコムの中村氏と茨木氏にお話を伺った。(取材日:2005年11月16日)

「BBモバイルポイント」ってどこで使えるの?


まずはインタビュー前に「BBモバイルポイント」についてお勉強。
(自分自身、統合後どう変わったのかよくわかっていなかったりするので・・・)。

もともとアクセスポイント数の質・量ともに充実していた2つのサービス「Yahoo!BBモバイル」(ソフトバンクBB)と「モバイルポイント」(日本テレコム)が統合して今年10月に新名称となって誕生したのが、「BBモバイルポイント」だ。

過去の流れを簡単に図にしてみた。



街中のファーストフードや空港などを中心に展開していた「Yahoo!BBモバイル」と、JR東日本とのタイアップで駅構内を中心に、新幹線停車駅、山手線主要駅などにアクセスポイントを設置してきた「モバイルポイント」は、重複エリアが少なく、統合でその利便性はさらに高まった。

写真:BBモバイルポイントステッカー例えばこんな場所(BBモバイルポイントエリア情報)。

飲食マクドナルド、銀座ルノアール、ニユートーキヨー他
空港ANAラウンジ(成田、羽田、伊丹、福岡)他
鉄道JR東日本新幹線停車駅、山手線主要駅他(京都、広島、新下関駅なども)
ホテル東急イン、ホテルニューオータニ、ホテル法華クラブ他


ホールセール型サービスで、Yahoo!BBはじめ主要ISP会員が利用可能


次に気になるのは「誰が使えるのか?」だ。
Yahoo!BBモバイルの時には「実証実験」の位置づけだったため、Yahoo!BB会員でなくても、Yahoo!IDを取得してオンライン登録をしておけば、誰でも無料で使うことができた。

10月3日以降「使えなくなってしまった・・・」とがっかりしている人が多いが、調べてみると実はそんなことはなく、以前の「モバイルポイント」同様ホールセール型のサービス(ISP経由で一般ユーザにサービスを間接提供する形態)で、多くのISPで利用が可能だ。

BBモバイルポイントの対応プロバイダ一覧

Yahoo!BBODNはじめ、@niftySo-netDIONぷららなど主要ISPが提携プロバイダとして並んでいる。

例えば自分は「@nifty」ユーザなのだが、1分8円で使える。メールチェック含め20分くらい使うことが多いが、その場合には160円。遅いPHSでだらだらとストレス感じながら接続することを考えれば、そう高くはない。(ただ自分の場合結構連続して使うことが多いので、早く実家用に自分名義で契約しているYahoo!BB会員IDを再発行しなくては・・・)

Yahoo!BB会員の場合、「無線LANパック」「ダブル無線パック」申込者は追加料金なしで、それ以外の場合は、オプション料金として月額利用料290円を払えば、公衆無線LANサービスは使い放題となる。

最大10分間利用できる「おためしID/PWサービス」というものもある。

自宅はマンションの光で、個別にISP契約をしていない・・・なんて人にお勧めなのは、ODNの「メール」コース(月額210円)に入会し、その上で「公衆無線LANサービス(157.5円/20分、月上限2,100円)」を利用するという方法だ。


統合&正式サービス化の反応はどうでした?

写真:日本テレコム中村氏(右)&茨木氏(左)これまで無料で提供していた「Yahoo!BBモバイル」にとっては、10月3日から遂に正式サービスとなって・・・つまりユーザから見たら有料化されてしまったということですよね。どの程度、定着したんでしょうか?

中村氏:ビジネス的にはホールセールなので、どの人が使っているのかという情報は各ISP側にあって、我々はわからないんですよ。無料試験中だったYahoo!BBモバイルが、アクセス数という意味では相当あったのは事実で、10月からの有料化で、さすがにそのアクセス数は落ちています。

ただ、以前別の事業者さんが有料化されたときに10分の1になったというようなことをお伺いしていたのですが、そこまでドンと落ちたイメージはないです。むしろ既に有料化していた日本テレコム「モバイルポイント」のアクセス数から見ると、実は3~4倍とかになっています。

たまにしか使っていなかった人だとサービス統合に気づかず、「あれ?急に使えなくなっちゃった」と困惑して彷徨っている人もいそうですね。

茨木氏:いると思います。そこは、サイトで登録の仕方を説明したり、ODNやYahoo!BBなどグループ内のプロバイダを通じて、きっちり告知をしていこうということになっています。また、他のプロバイダも、So-netさんが加わったりと、我々の動きを視野に入れた上で、積極的に導入を検討してくれるようになってきました。主要ISPさんの他、地域密着のプロバイダさんにも強い関心を持っていただいています。年明けから来年度にかけて、対応プロバイダはまた増えてくるでしょう。


マクドナルド約2,600店舗導入のインパクトはすごそうですね

これまで無線LANサービスについては様子見だった中堅プロバイダなども、サービス統合を契機に積極的に検討を始めたということですか?

中村氏:統合というよりは、先日発表した「マクドナルドさん2,600店舗で使えるようになります」ということのインパクトのほうが大きいようです。統合自体は、まあグループ会社だし、方向性としては当然と受け止められていたでしょうし、エリアも足して800くらい。エリア数という基準だけで比較すれば、NTT東西さんもサービスを一本化されていますし、NTTコミュニケーションズさんも単独で3,000とかいう数をお持ちなので、そういった点から統合インパクトはそんなにはなかったかもしれません。

でも、マクドナルドさんのプレスリリースは、非常に大きなインパクトがありまして、今いろいろなプロバイダさんが積極的にこちらを向いてくださっているのですが、それも発表から数日の間に来ています。

写真:日本テレコム中村氏エリア数が急激に増えることになるんですね。

中村氏:数の上では3,200くらいと、他社さんと比べても単独1社としては最大になると思います。ただ、そのこと以上に「マクドナルド」というところが重要だと思っているんですよ。あるいは我々がもっているJRの駅とか。エリア数というのは結果論であって、どこで使えるかをわかりやすくしないといけない。使う人が「どこなら使えるのか」と探さなくてはいけないようでは、インフラとして広がらないと思っています。

携帯が最初にスタートした時もそうで、エリアが限定されていて、携帯電話どこで使えるんでしょう・・・という時代には、ごく一部の、どうしても必要な人しか持ってはいなかったと思うんです。今、事前に携帯電話が使える場所を探しておくなんて必要はないですよね。無線LANについても同じで、インフラとしてそういう状態を目指すようなサービスだと思っています。

携帯のように、いつでもどこでも利用できるサービスということですね。

中村氏:無線LANの場合は、最初から「面」を押さえるような技術やインフラだとは思っていないです。「点」なんだけど、どこで使えるかはあまり意識せずに使える──。

写真:日本テレコム茨木氏茨木氏:頭の中で「面」になっていればいいと思うんです。

中村氏:例えば大阪に出張で出かける時、今までなら事前に調べていかなくては無線LANが使えるところを探せなかったと思うんです。でもこれから「マクドナルドがあれば使える」「JR主要駅なら大丈夫」ということが浸透してくれば、いちいち事前に調べる必要もなくなりますし、行ってみて本当に使えるのだろうかと不安に感じることもなくなるでしょう。「使えて普通」「全国どこでもマクドナルドに行けばいいのね」と。

茨木氏:「マクドナルド」「JR」は我々にとって両輪のような存在です。マクドナルドさんがさらに一歩踏み出したことで、「うちでも利用できるようにしたい」「うちのエリアでいれるとどうなるのか」と、他のエリアの企業さん(注:飲食店やホテルなど無線LANサービスを設置する側の企業)も、これまでの興味本位の姿勢から、真剣な検討開始へと変化し始めています。


一歩先を見据えたサービス展開

でもまだ、無線LANサービスを積極利用しているユーザは数的に限られていて、飲食チェーンにとってそんなに顧客サービスとして重要なもののようには思えなかったりもするのですが、どうなのでしょう?

iconicon 中村氏:3年間、マクドナルドさんの220数店舗で実験をさせていただきましたが、その結果としての集客効果を評価していただいたところはあると思っています。今、ビジネスモバイルワーカーといえば、PHSデータ通信カードを持っているような人ですよね。この市場はそんなに小さなものではなくて、日本国内で150万枚くらい出荷されているそうです。マクドナルドさんにとっていまいまの客層とは違うところなので、そういうビジネスユースの客層の方が無線LAN導入によって来店する可能性がでてくるということは、プラスに考えていただけていると思います。

もうひとつ。
やっと今年、PC以外の端末というものが世の中に出始めました。トレンドとしてそういうものがコンシューマの中に広がってくれば、パイはぐんと大きくなるわけです。今、マクドナルドさんに来られているお客様がそのまま対象になってくるわけです。何がでてくるかというと、例えばゲーム機。任天堂のDSにしても、ソニーのPSPにしても、WiFiを持っているわけです。できるかどうかはわからないですよ、でも仮にそういうものがエリアで使えるということになってくると、非常にインパクトある話になる可能性は秘めています。

そういえば、ソニーのロケーションフリーテレビは、PSPやパソコンを端末に、無線LAN経由で自宅のテレビを見ることができるようになりましたよね。

中村氏:そういったものを公衆無線LANの場に持ち込めるかどうかなどはありますが、インフラって作るのにある程度の年月はかかります。ブレイクしてから慌ててやったのでは追いつかないわけですよね。

ブレイクしてからでは追いつかないというのは・・・メーカーのこと?

中村氏:メーカーにしても、インフラを作る側にしても、それに乗ってくるコンテンツホルダーも全部そうだと思うんです。それを、今の時期にやろうと決断するか、それともブームが来てからやろうと思うかは、経営者の方の手腕の問題だと思います。どっちが正解かは結論でてからじゃないとわからないですが、恐らく、マクドナルドさんの判断としては、今からそういうところも想定してやっておくべきではないかという判断をしていただけたんだと思います。





「W-ZERO3」は12/9よりWILLCOM直販サイトで予約開始

個人的にはウィルコムの「W-ZERO3」が気になっています。

中村氏:ウィルコムさんでやられるのは、第一弾はHOTSPOTでやるとおっしゃっていますが、そういうものが世の中に広がってくれば、当然利用の対象となってきますね。

そういえば提携無線LANサービスはHOTSPOTになっていましたね。でも自宅や会社などでも無線LAN使えるようになっているのだろうから、他社サービスでも大丈夫ですよね。

中村氏:ブラウザで認証ができれば大丈夫だとは思いますが、HOTSPOTさんと提携してサービスを提供ということですから、何か使いやすい仕組みになっているのでしょう。

無線LANを搭載した音声端末がたくさんでてくることを、ユーザは期待しますよね。

中村氏:時期を同じくして、携帯の参入が許可されたわけですから、われわれ全体の動きとしては、当然そういうことも検討しながらということになるんでしょうが。

携帯事業とカーニバったりはしないんですか?

中村氏:そこが社内競合をおこすことはないと思っています。そこはむしろ、補完的な使われ方になってゆくんじゃないかと。例えば、ライブドアさんがそうかどうかは知りませんが、仮にWiFiを面展開して、そこで完全に通信を切り替えてゆくというような方針で臨むとすると競合を起こす可能性があるかもしれません。ただ、WiFiは面展開をするのは厳しいと思っているんですよ。いくらべたっと面がとれても、われわれの考えでは、エリアが全部つながっていて、きっちりカバーエリアとして100%カバーしているという状況は想定していないんです。
マクドナルドという面でカバーしましたといっても、それはあくまで店の中の話で、日本全国それで通話エリアが円でかさなって全部カバーできているのかというと、そういうことは想定していないんですよ。もちろんマクドナルドのお店が50m間隔で建っているわけではないですから。
方針は各社によって異なると思うのですが、ソフトバンクグループでいうと、無線LANは、保管にこそなれ競合してしまうことはないです。


今後の注目トピックス~Non-PC端末の動向~

写真:日本テレコム中村氏ところで最後にひとつ質問なのですが、来年以降で何か面白いネタってあります?

中村氏:(笑)ちょっと具体的なことをなかなか言いづらいところはあるんですが、期待しているっていう点ではNon-PCの端末。今年やっと、無線LANのインターフェースを持っているハードウェアが世の中にでてきましたよね。PSPや任天堂DSのように、無線LANを活用した対戦型のオンラインのゲームですとか、キヤノンさんやニコンさんは、デジカメにまで無線LANの機能をつけておられる。

うちのプリンタも無線LAN付きになりました。

中村氏:世の中に賢い方がたくさんいるので、そういった製品があるなら、こういったサービスができるだろうなどと考えていただけるんじゃないかなと。いくつかはソフトバンクグループでもやるのでしょうが、そういうものがでてくると、我々の側も次のステップに入れるんじゃないのかなと思っています。

不勉強ですみません、PSPは、仲間同士で対戦する用途以外に、インターネットに接続できる端末なんですか?

中村氏:PSPについてはブラウザのサブセットが入っているので、そういう点ではPCとあまり変わらないですよ。今でもユーザの使い方次第でいろいろできます。私が期待しているのはもう少し違った形で利用できるようなものがでてくるんじゃないかと。パソコンに限らず、PSPでもゲーム機でも、ブラウザで認証をして・・・といった瞬間に、やはりある程度そういったスキルある人しか使わなくなるわけです。そうではなくて、もっと簡単に、先ほど言いましたようにまるで携帯電話のように、認証とかではなく、裏ではそういう仕組みが動いているのでしょうが、利用者からは全くそういうものを意識しないで利用できるようなサービスがでてくるんじゃないかなと。

写真:日本テレコム茨木氏茨木氏:例えばですが、iPodのようなものが街角で簡単にネットに接続できれば・・・と思う人はでてくるんじゃないかと。まあ、もちろんそこにはいろいろなハードルもでてくるわけで、我々だけでは立ち入れない問題もあるでしょうが。

よく「ユビキタス」構想ででてくるような家電やAV製品がネットにつながってゆく世界が来年とかこの後一気に進む?

茨木氏:もちろん来年それが一気に進むとは思っていないです。無線LANだけでも5年もかかっているわけですから(笑)。

中村氏:ここ一年という短い期間ですべてが解決するとは思っていません。ただ来年は、そういったステージに入っていけるんじゃないかという期待はしていますね。

ハードだったりインフラだったり、順序があると思うのですが、インフラ側は整ったという認識なのでしょうか? 中村氏:マクドナルドはひとつの結果だと、もちろん思っています。ただ、次に展開する時には、そういう新しいサービスの動向を見定めて打たないといけないと思っているんですよ。今はこういうPCだから、飲食店のように椅子と机があって座ることができる場所でないと、実際に使うシーンというのが想定できないですよね。駅と言いましても、今想定しているのは駅の中のカフェや待合室です。

でももし、Non-PCの端末がでてきたら、改札を通っている間とか、移動している間とか、どこかを経由している間に・・・ということになってくるかもしれませんよね。そうすると、「打つ位置」というのが今度はちょっと変わってきます。

写真:駅改札もっと将来のことをいいますと、カーナビにそういうインターフェースが積まれるだろうなんてことは、ITS協議会が発足した時から言われているわけですよね。いつ実現するかはわからないですが、仮にそういうものが実現するなら、車が行く場所・・・それは駐車場かもしれないですし、通過するところ、例えばマクドナルドさんでいえばドライブスルーかもしれない。そういうものともちゃんとリンクしながら設置位置というものは想定していかないといけないと思っています。

インフラをやっている自分達は、どういったアプリケーションサービスがでてくるのかも見据えながら、しかもあまり先行投資にならないようにタイミングをできるだけそういうものにあわせながらやっていくというのが使命になってくると思うんです。ありあまる資金があれば、最初からどこにでも置いておけという話になるのかもしれませんが、それはそれで別の問題を引き起こす可能性があると思うので。

インフラ側のロードマップとサービス側、ハードウェア側のロードマップは、当然いろんなところで重なり合ってゆくのですが、一番最初にできないといけないのはインフラ。これは鶏と卵の理論じゃなくて、必ず「インフラ」が先にできないといけない。

そう考えると、無線LANサービスの展開って、ADSLや光と比べて、スリリングで面白いですね。リスキーというか・・・。

中村氏:面白いと捉えれば、そうかもしれないです。
幸か不幸か、われわれはリスクをともなわないところにくることができたと思っています。

いろいろ勉強になりました。ありがとうございます!

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