チェコの伝統工芸・ボヘミアガラス工房を見学

チェコを代表する伝統工芸と言えば「ボヘミアガラス」。
硬いガラスに精細なカットをほどこしたり、曲線も美しい絵柄が彫刻された芸術作品が多数生み出されています。

そんなボヘミアガラスの工房を見学できる場所がカルロヴィ・ヴァリにあります。
19世紀に創業したモーゼルガラスです。

今でも職人によるハンドメイドでガラス製品を作り続け、世界各国の王室の晩餐会などでも使われる由緒あるメーカーで「王室のガラス」との別名もあるのだとか。

建物の前には、ガラスで作られたオブジェがいろいろ。

左はモーゼルガラス工房創設者のルードウィック・モーゼル(Ludwig Moser)。
1893年創業です。

カルロヴィ・ヴァリは当時も周辺各国から多くの温泉療養者が集まる場所で、彼らに良質なボヘミアガラス製品を販売するためこの地に工房を作ったということのようです。

まずはミュージアムでモーゼルガラス作品を見学。
平面カットのファセットカットのグラスはじめ、さまざまなタイプの作品が展示されています。

ガラス製品そして手作りとは到底信じられないようなこんな彫刻ガラスも。

「カット」「彫刻」そしてグラスの上部に金をあてた「ゴールド」がモーゼルの特徴。英国王室におさめられたグラスセットなども見ることができます。

日本語のビデオ上映も見た後で、いよいよ工房見学です。

案内スタッフの女性から「危険なので決してひとりで動かないでください」という注意を受けた後、工房に入っていきます。そしてびっくり。

ガラス越しに遠くから一部を見れる程度かと思ったら大間違い。
私たちが入っていったのは、まさにモーゼルガラスの作品を作り出している中心部でありすべて。

多数のマイスター(職人)たちが張り詰めた顔つきで作業をしている場所に入っていくことができました。広くかつ天井も高い空間ですが、ガラスを熱する窯のため室温はかなり高くなっています。

周囲を歩いているだけで汗が流れ落ちました。

作業はすべて3人1組で行われています。壇の上にのりガラスを吹いたり整形したりカット・彫刻をすることができるようになるまでには長い年月の下積みが必要となります。

揃いのシャツは、汗でびっしょりとなっていて、傍らには自分で作ったものなのでしょうか。水を入れた大きなグラスがあり、頻繁にそれを飲んで水分補給をしながら作業をしていました。

冷蔵庫もあり、そこからボトルを取り出して栓を抜いているのを見てびっくり。「ビール飲んでるの!?」
もちろんビールではなく、案内スタッフ女性によるとノンアルコールビールとのこと。高温の中での8時間以上の作業ゆえ、水分補給が重要なのだとか。

何人もの連係プレイで作り出されてゆくモーゼルガラス。
終盤の作業のちょっとしたミスで、それまでのすべての作業が無駄になってしまうこともたびたびあるのだとか。

本当にこんな風にひとつずつ手作りされているのだから、そりゃ工業製品とは格段に価格が違うのは当然だよなと納得できました。

「職人技」

を、どぎまぎするような近距離から見ることができるこの工房見学。
個人での見学は受付けていませんが、現地ツアーなど申し込むことで体験することができます。

●モーゼルガラス工場と温泉保養地カルロヴィ・ヴァリ 1日観光ツアー<日本語ガイド/プラハ発> | チェコ(チェコ)旅行の観光・オプショナルツアー予約 VELTRA

少々持ち帰るのが不安でもありますが、直売店では美しいモーゼルガラスの製品を購入することも可能です。

(初期記事公開日時: 2017年5月20日 @ 12:52)