スパの街「カルロヴィ・ヴァリ」で鉱泉を飲み歩き

ドイツの温泉療養地などは日本でもよく知られていますが、実はチェコにも温泉があり、国境を越えて多くの人が訪れるほど大人気のスパタウンがあるのです。

それがチェコの西の端に位置する町「カルロヴィ・ヴァリ」。
ドイツとの国境からも近い場所です。

街中には姉妹都市の看板が。
日本の群馬・草津町の名前もあります。

ここでは3時間ほどの現地ガイドツアーに参加しました。

まずはカルロヴィ・ヴァリの概要。
5万人ほどの人口の決して大きくはない街ですが、その人口をはるかに越える観光客が毎年この地を訪れているとのこと。

源泉が連なる通りの両側にはホテルがびっしり立ち並び、住民はまた別の居住区に住んでいるそう。

「ここは高いからですか?」
「学校もスーパーもないのでここは住めません。あくまでスパ利用者のためのエリアなのです」

最初に目に入ったのがここ。
建物とも連結された、装飾も美しいアーチの渡り廊下。

「コロナーダ」といって、源泉を保護するための建物なのだそうです。

その先には手にカップらしきものをもつ人の列が。
彼らが並んでいる先に、温泉を汲むための場所があるのだとか。

そう、カルロヴィ・ヴァリの温泉の楽しみ方は「飲泉」なのです。

温泉というと、日本人的には当然「温泉入浴」ですが、ここカルロヴィ・ヴァリの温泉は主として飲むためのもの。ホテルには湯につかるタイプのスパもあるものの、大きなプールのような設備があるわけではなく、基本、一人サイズのバスタブに湯を張ってそこに浸かるスタイルだそうです。ホテル以外に有料ではありますが、パブリックなスパもいくつかあります。

メインストリート沿いにはいくつものキオスクがあり、売っているのは飲泉専用カップ。
それもよく見るとどれも中が平たくつぶれた形をしたユニークなものばかり。

大きさもいろいろで、猫や像のフォルムをしたものもあります。

なぜこんなぺちゃんこにつぶれた形状をしているのか。
ポケットに入れて持ち歩くためなのか。

ガイドさんが説明をしてくれました。
実は「取っ手」だと思っていたのは実は「ストロー」。上部先端に小さな穴が開いており、飲むときはそこに口を当てて吸い上げるか、カップを静かに傾けて飲むのだそうです。

次の源泉があったので、近づいてみました。

確かに皆さん、マイカップを持っていてそれに温泉を汲んでいます。

温泉の水温は60度以上あり、そのまま飲むと少々熱い場合も。
この取っ手部分のストローから飲むことで、それが少し冷めて飲みやすくなるのだそうです。

英語で話しかけたらドイツ語が返ってきた女性。
ガイドさんによると、国境も近いドイツから多くの人がここを訪れるそうです。

今回チェコ政府観光局が主催するブロガーツアーに一緒に参加したKさん。のちほど彼女のブログ記事もリンクさせてもらう予定です。

この先の源泉はどこも立派なコロナーダの下にありました。渡り廊下というよりこうなると回廊ですね。

見た目は小さな水汲み場。
飲むとかなり濃厚な鉄分の味。軽い塩分とほのかな甘みも感じます。

そんな味なので、「美味しい」というわけではないのですが、確かに身体によさそうな気にはなります。

傍らの柱には源泉名が書かれたプレートが埋め込まれていました。それぞれ番号も振られ、温度も記載されています。

この温度が大事だそうで、日本のようにペットボトルや時に大きなタンクに入れて持ち帰るということはせず、この場で組んですぐ飲み干すのが大事とのこと。

療養目的で数日から一週間滞在している人も多いとのこと。温泉専門のドクターがいて、抱えている病や身体の状態を話し、どの源泉を飲むのがいいかという指示を受けるそう。

源泉はテプラー川沿いの通り数キロにわたって全部で13か所。そこをぶらぶらのんびり歩きながら源泉をまわります。

日本の温泉巡りとは全く違った光景です。

通りを歩いているのは比較的年齢層が高い人が多く、ステッキを2本ついて歩いている人の姿も何度も見かけました。もしかすると足腰・関節の問題にも効くと言われているのかもしれません。

源泉はそれぞれちょっとずつ味も違います。
療養で来ている人も、13の源泉すべてを飲み歩いているわけではありません。身体にいいといっても適量があり、飲み過ぎには注意したほうがよさそうです。

両側にはお店が立ち並び、その上は大半がホテルになっています。ドイツ、そしてロシアから療養目的で長期滞在している人が多いとのこと。アパートメントもあり、それらもロシア系の住民が多いそう。

ここは他より石灰質がびっしりこびりついていました。

そして コロナーダの突き当りにあったのは、チェコ・プラハがヨーロッパの中心地として輝いていた黄金の時代を築いた神聖ローマ帝国皇帝カール4世の名前を冠した源泉。

レリーフには、狩りの途中でけがをし、湧き出していた泉にひたして傷をいやしたという故事が描かれています。

14世紀半ば、ボヘミア王であり神聖ローマ皇帝にもなったカール4世(ボヘミア王としてはカレル1世)が偶然に温泉を発見したとされる。街の名称も、そのカール4世(カレル1世)にちなんだものである。
18世紀以降、温泉地として急速な発展を遂げていった。

●カルロヴィ・ヴァリ – Wikipedia

ホテルの前には大きな噴水。
・・・と思ったらこれも温泉とのこと。間欠泉のようなものでしょうか。

大勢で一斉に入れるスパはないと聞いていたので、湧出量が少ないのかと思ってしまったのですが、そんなわけでもないのかもしれません。

川沿いにびっしり立ち並ぶホテル群。
その先は急な坂になっていますが、高台の上にもまた別荘などが立ち並びます。

日本や台湾の温泉街とも通ずる部分もあって、なかなか楽しめる光景です。

突き当りにあるのはカルロヴィ・ヴァリで最大かつ最高級のホテル「グランドホテルプップ」。映画007「カジノロワイヤル」の舞台にもなったホテルです。

ホテル前の広場には、ここを訪れた著名人の名前が刻まれていました。

そこから引き返して、一番最初に行列ができていた人気の15番目の源泉にも立ち寄ってみました。

ここは最も新しく、蛇の口から湯が流れ出ています。「13か所しかないのになぜ15?」と思われるかもしれませんが、13と14の番号は、カルロヴィ・ヴァリの有名な薬草主「ベヘロフカ」の二種類に割り当てられているのだとか(実際には源泉ではありませんが健康にもいい液体ということでのようです)。

飲んでみてびっくり。ここは炭酸泉でした。塩っぽさも他より少なく飲みやすい温泉です。

古くはカール4世、その後もバッハやゲーテ、ベートーヴェンなどが療養に訪れ飲泉したという歴史ある温泉地・カルロヴィ・ヴァリ。

日本とは違う新鮮な「温泉体験」ができます。
他にもベヘロフカ博物館やボヘミアガラス工場などもあり楽しめる場所です。プラハからの一日ツアーでもいいですが、一泊してのんびりまわってみる価値もある場所です。

街中風景は、Googleマップのストリートビューでも楽しむことができます。

(初期記事公開日時: 2017年5月20日 @ 12:01)